フリーランスと業務委託という言葉は似たような意味で利用されますが、言葉の意味合いは根本的に異なり、働き方を意味するフリーランスと契約形態を意味する業務委託の違いがあります。
この記事では、IT系フリーランスの業務委託契約や契約書について解説します。
- フリーランスという言葉は働き方の定義
- 業務委託は契約形態のこと
- 業務委託では準委任か請負かをきっちり確認しておこう
- 費用や支払いについても細かく決めておくことが大切
- 損害賠償や解約についても契約時点で同意しておく
目次
フリーランスと業務委託の違い
まずは言葉の整理です。
フリーランス
フリーランスとは働き方を指します。個人企業主や個人企業法人といえば分かりやすいでしょうか。特定企業に所属せず、契約単位で仕事をしていきます。フリーランスの対義語は会社員や給与取得者(サラリーマン)です。
ちなみにフリーランスという言葉を調べていたときに、「デジタル大辞泉」で以下を偶然見つけました。
中世ヨーロッパで、主君を持たず自由契約によって諸侯に雇われた騎士。傭兵。(デジタル大辞泉より)
時代は違えど、全く同じ意味というのは面白いですね。
業務委託
業務委託とは契約形態を指します。業務委託という言葉が一般化していますが、正確には準委任契約と請負契約があります。簡単にいうと、準委任は時間契約、請負は成果物となります。
準委任契約
クライアントに常駐、あるいは決まった時間にリモート接続して、単価×時間で報酬金額が決まります。IT業界でSES(System Engineering Service)契約と呼ばれているのは、準委任契約です。
準委任の「準」とは何でしょうか?これは、法律関係では委任契約といい、それ以外は準委任と「準」が付くだけで大きな意味はありません。
請負契約
決められた成果物を納期までに完成して、クライアントに納品して完了です。ソースコードや記事といった目に見える形のものを納品するので、分かりやすいですね。
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業務委託の流れ
達成したいビジネス上のゴールを合意する
まずは、発注者は何をしてほしいのか、何をもってゴールとするのかをフリーランスに伝えます。大がかりなシステム開発でいうと、いわゆるRFP(提案依頼書:こういった提案をくださいという依頼内容)にあたります。
フリーランスはそれを受け、実現に向けて費用、報酬や納期といった内容を提案します。そこから微調整をして、合意ができれば次のステップへと進みます。
契約を締結する
合意内容を受けて、契約を締結します。
仕事をする
契約に従って仕事をします。業務委託は常駐型であればクライアント先で、リモートワークならクライアントの外から接続して仕事をします。請負であれば成果物を作成し納品します。
検収してもらう
準委任は作業が完了したことを報告して検収を依頼します。具体的には勤務した時間を記載した勤務実績表などを提出します。請負は決められた成果物を納品して検収を依頼し、あらかじめ合意しておいた基準に達していれば検収合格です。
報酬を受け取る
最後に、報酬を受け取って終了です。指定した口座に指定した額が入金になっているはずです。
業務委託を締結する際の注意点
業務委託契約を締結するとき、以下の注意が必要です。
準委任か請負か
講師やコンサルティング業なら、フリーランスの技能が目的です。よって、成果物ではなく時間単位、1回あたりの報酬となるので準委任にピッタリです。逆に、プログラムや記事の納品であれば、成果物の納品が検収条件になるので請負契約にすべきです。
法律関係の話
準委任や請負といった「主となる法律」は大事ですが、忘れてならないのは「従」の法律です。著作権や特許権、個人情報をあつかうことがあれば秘密保持契約を検討しなくてはなりません。
契約書を書くときの主な項目・ポイント
当事者の確定
誰と誰の契約かを明確にします。もちろん、連絡先を含めて必要です。
契約の対象は何か
何を求める契約なのかを明確にします。技能、または成果物のいずれを求めるのかを決めます。その内容に従い、準委任か請負かが決まります。対象が定まったら、おのずと契約期間や納期も、規模や難易度に応じて決めることができます。
請負の場合は、納品物をキッチリ明記しておきましょう。忘れがちなのが「設計書」「マニュアル」です。これを納品対象とするのかどうかは発注者と受注者間で明確に決めておきましょう。
費用や支払い
発生する費用について、発注者と受注者のどちらが負担するかです。常駐型の準委任なら交通費、リモートワークなら通信費や業務上必要なソフトのライセンス費用はどちらが負担するのかを決めます。報酬の支払いについては、締めや報酬の受け取り方(手渡しなのか振り込みなのか)を決めます。
損害賠償や解約
重い話ですが、必ずしておかなければなりません。決められた納期や品質を満たすことができなかった場合の話です。さらに、発注者は検収で発見できなかった瑕疵があったとき、著作権侵害のある納品物を受け取ってしまったとき、契約が完了せず解約できるのか、といったことを決めます。
金額にかかわらず、これらのことは明確にしましょう。例えば、請負で1〜2万円で作らせたプログラムに問題がありユーザーが多大な損害を負った、受注者が事実と反することを記事にして発注者が世間的に大バッシングを浴びた、などといった場合はどちらがどのような責任を負うのかなどです。
その他
うまくいった後の話も決めましょう。つまり、プログラムを無事納品が終わったあとバージョンアップをどこまで対応するのか、他の案件に流用することを受注者が許すのか、受注者はどこまで著作権を主張するのか、といったことも大事です。
メールや口約束をもとに責任を求めようという方もおられますが、大変困難です。メールといってもクライアント側の一担当者が自らの思いで送ったものであることが多く、責任問題にするなら、それが会社としての意思であったことを立証しなければなりません。
ましてや口約束は形すら残らないので、これが法的にほとんど意味がないことはいうまでもありません。
言った言わないの話を避けて、ビジネスを円滑に進めるためにも契約書は必要なものです。
契約書のテンプレート・雛形
契約の重要性は分かったが、では実際に何を作れば良いかと迷った方に、おススメしたいサイトがあります。経済産業省のサイトです。
このページのモデル取引・契約書<第一版>をご覧ください。Word形式でも公開されているので使いやすいです。そのまま使うには重厚すぎるので、必要な部分だけ抜き出して使ってください。
上記ページは契約書のサンプルだけでなく、契約に必要な周辺知識も得ることができます。ぜひ一度のぞいてみてください。
その他必要な書類
あとは一般的な商取引きと同じです。何にいくらかかるのかを見積書で提示します。納品が終わると請求書を送ります。
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まとめ: しっかりと契約を結べば安心!
いろいろと重いことを解説しましたが、契約はしっかりと結べば味方になります。
お互いの認識にずれがないことを明確にしたり、メールや口約束だけとはまったく異なる緊張感を持つことができる、といった効果もあります。
フリーランサーは会社員とは異なり、自分のことは自分で守らなければなりません。ぜひ契約と契約書の書き方をマスターし、自分を守る武器としてくださいね!