「AIが人間の仕事を奪っていく」と、最近よく言われます。
それは大げさだとしても、人工知能関連の開発がどんどん増え、2030年にはIT開発市場の半分以上が人工知能案件になるとの予測もあります。
大きく IT技術やエンジニアとしての価値が変容する中、IT技術者として、今後どのようなスキルが必要になってくるのでしょうか? また、未経験者が IT エンジニアを目指す上で必要な情報について解説します。
- ITSS(アイティーエスエス)や資格はエンジニアを評価する指標にもなる
- 未経験でも IT技術者になれる可能性があるが、事前にスキルを積んでおいた方がよい
- IT技術に関する情報はインターネット上に沢山あるので積極的に活用する
- AWS、Azureの無料枠を活用してスキルを高めよう
IT技術者に必要なスキル
企業が、プロジェクトに必要なSEを集める際によく使う指標が、ITSS(アイティーエスエス)。
各種IT関連サービスを提供するために必要なスキルを体系化した指標で、IPAが策定しています。
人工知能などの先端技術に対応させたのが、ITSS+(アイティーエスエス・プラス)
ITSS+は、ITスキル標準(ITSS)に以下の指標を追加したものになります。
- セキュリティ
- データサイエンス
- IoTソリューション
- アジャイル
参考)ITSS+(プラス)・ITスキル標準(ITSS)・情報システムユーザースキル標準(UISS)関連情報:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
今後は、ITSS+でスキルを見られるようになるでしょう。
ただし…これらの指標は、確かに、一定のスキルに達した人材を集めるには目安になります。しかし、ITSS、ITSS+は自己申告で、どちらかというと抽象的なもの。
もっと具体的に評価される指標はないのでしょうか?
評価されるIT技術者資格とは
IT技術者の中途正社員採用で重視される資格を調査したレポートがあります。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における資格・検定等の活用、大学院・大学等の受講支援に関する調査」(平成27年) P4
意外にも、もっとも重視されているのは、63.3%で基本情報技術者試験。ダントツの一位です。
SEの仲間内では、いまさらそんな資格とってもしょうがないだろうとか言われる資格です。逆に言うと、そんな資格さえ持っていないなんて、勉強嫌いの怠け者なんじゃないの?と企業から評価されてしまうのかも知れません。
最重要視されているというよりは、最低限これくらいは持っていないと…という意味合いで、重視度が高いのでしょう。
続いて、応用情報技術者、オラクルマスター、シスコ技術者認定、ITパスポートと続きます。
IT系以外で評価が高いのが、語学検定(英検、TOEIC,TOEFL)と簿記。
業務で英語を話すことや、経理上のお金の計算ができることが求められているのでしょう。
自動車免許は、電車移動が困難な郊外のお客様がいる企業では必須なのだと思います。
まだ、先端技術については標準で使える資格が定まっていないため、資格での評価は難しいかも知れません。
IT技術者には、未経験でもなれる可能性はある
給与の高さから、他業界からIT技術者になりたいという人も少なくありません。
IT技術者には未経験でもなれるのでしょうか?
一般的に、会社の中途採用で、不採用理由ナンバーワンは「経験が少ない」こと。
- 経験が少ない
- (経歴、希望など)適性があわない
- 他者を採用した
- 能力不足(免許・資格がない)
- (面接時の)態度が悪い
「不採用理由ランキング」 ハローワーク布施のアンケート結果より
未経験の場合、研修期間を多く取らなければならない上、現場で教える人間の負担も増えます。採用面では不利と言えるでしょう。
それでは、若いならともかく、40代でIT技術者になるのは、絶対にムリなんでしょうか?
40代未経験でIT技術者になるのは無謀?
若い20代の技術者なら、ワンチャンあるかも知れない。でも、40代で未経験でIT業界入りなんて無理だろう…と想像してしまいますね。
しかし、実は、可能性はあります。
厚生労働省から、中途採用について企業に助成金が出ているんですね。
例えば、「十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な者を雇い入れる」(35歳~60歳)という助成金が年間で一人あたり60万円でます。
「安定就業を希望する未経験者を試行的に雇い入れる」という助成金が月額4万円×3ヶ月の12万円出ます。
参考)トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) 厚生労働省
期間は十分ではありません。助成金が出ている期間中に技術力をつけることができれば、チャンスはあると言えるでしょう。
特に、前職の経験や業務知識が思いがけず役立つ場合もあるので、トライしてみる価値はあるでしょう。
IT技術者の分類
IT技術者には大きく2種類、ハードウェア技術者と、ソフトウェア技術者がいます。1960年代以降、IT技術者と言えばソフトウェア技術者でした。
しかし、人工知能技術が注目されて、少々状況が変わってきました。
ハードウェアエンジニア
ハードウェアメーカーでの仕事や、組み込み系の仕事、また故障した機械の保守(修理等)の仕事があります。
ソフトウェアに比べて、市場が狭く、転職時にも前職の強みが活かしにくいというデメリットがありました。
しかし、状況が大きく変わる可能性が高まってきています。それはIoT技術。
人工知能技術とともに注目されているIoT技術はハードウェアとソフトウェアを繋ぐ技術です。
冷蔵庫や炊飯器などの家電のほか、自動販売機や自動車、お店で売られる服についているタグまでがインターネットに繋がる時代。
200億個以上のモノがネットにつながる近い未来では、IoT技術はなくてはならないテクノロジーとなるでしょう。
IoT分野では、ハードウェアのほか、ネットワークやサーバ技術が必要になってきます。ネットワークやサーバの専門家は多くても、ハードウェアに強いSEは少ないのが現状。
すでにハードウェア系のスキルをお持ちのあなたは、IoTという分野を意識することで、仕事の幅がグンと広がる可能性があります。
ソフトウェアエンジニア
一般的にIT技術者といえば、ソフトウェアエンジニアを指す場合が多いです。
しかし、ひとくちにソフトウェアエンジニアといっても、開発エンジニア、インフラエンジニア、セキュリティエンジニア…と職種は多岐にわたります。どのようなスキルを身に付ければ良いのでしょう?
「SEの職種分布」の目安になるデータを見つけました。
少々情報が古いですが、SEのスキル標準ITSSをまとめた調査データがあります。その中に、回答者をITSSで定義した11種の職種の中から一つ選んでもらった結果がこちら。
ITSS調査データから見るIT技術者のキャリア形成とスキルの関係(筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 2012年) P128
2008年~2010年まで3年連続で行われた調査の累計値です。
アプリケーションスペシャリストと、プロジェクトマネジメントのスキルを持つSEが突出して多いです。
給与面での評価が出やすい管理職(プロジェクトマネジメント)と、上流工程を担当するSE(アプリケーションスペシャリスト」にスキルが偏るのは、当然のことと言えるかも知れません。
しかし、これはあくまで10年前のデータ。
今後は、人工知能分野に代表される先端技術分野の拡大で、SEにも大きなスキル転換(Reスキル)が必要になってくると考えられます。
IT技術者のスキル情報収集サイト
Reスキルが必要とは言っても、先端技術の研修に参加するには、それなりのお金がかかります。
何か、もう少しお手軽に始められるスキル学習方法はないものでしょうか?
IT技術者のスキル習得に役立つ情報サイトを集めてみました。
Grow with Google
https://grow.google/intl/ALL_jp/
Googleが無償で提供している学習サイト。
概要的な内容が中心で、現時点ではリンク切れや日本語コンテンツがないなど、完全ではありません。
しかし、「デベロッパー向け」に機械学習コンテンツが用意される予定です。Googleの用意する機械学習の教育コンテンツ…これは、期待したいところです。
@IT
IT関連のニュースや、現場で使える技術情報が大量にあるサイト。かれこれ20年前からの超定番サイトです。
取り扱う分野が広いので、どのジャンルのIT技術者にもおすすめです。
GITHUB
読み方は「ギットハブ」。様々な言語のコードが無料で共有されているサイトです。
コードをそのまま実行すれば動くので、言語学習には最適です。
ビジネス用に使う場合は、ライセンス費用を支払うことでそのまま流用できるものもあります。
Qiita
読み方は「キータ」。IT技術に特化した技術共有サイトです。
ブログのような形式で、技術情報が共有されています。
順番に読むというよりは、技術関連を検索していたらQiitaが出てきたので、ブックマークした、ということの方が多いですね。
誰しも未経験で IT エンジニアになれるか不安ですよね。「ポテパンキャンプ」では無料カウンセリングを実施しており、転職時に必要な準備や、スキルマップの育て方などについてアドバイスをしています。未経験でエンジニアを目指すなら、まずは相談してみてください。
IT技術者のスキルを高める第一歩
現在では、MicrosoftのAzure(アジュール)環境や、Google Colaboratoryなど、一定期間無料で使えるクラウド環境も充実しています。ゲーム開発環境のUnityなども無料で利用できます。
Windows10には、Windows Subsystem for Linux という機能が搭載され、パソコン上で気軽にLinux環境を構築できるようになりました。
やる気と時間が確保できれば、IT技術者のスキルを高める環境は揃っていると言えるでしょう。
無料で使えるものは賢く活用して、10年後にそなえてReスキルをおこなっていきましょう。
まとめ
2025年時点で約36万4千人のIT人材が不足すると言われるため、努力次第で未経験者でもエンジニアになれるチャンスは多くあります。新しい技術が次々と生まれる IT業界では、新しい情報に常に耳を傾け、スキルを高め続ける姿勢がエンジニアには求められます。
無料で使える学習環境を使い倒しましょう。
Microsoft Azure 12ヶ月無料
https://azure.microsoft.com/ja-jp/
Google Colaboratory(クラウド環境で実行されるjupyter notebook環境)
https://colab.research.google.com/notebooks/welcome.ipynb?hl=ja
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