文部科学省の「小学校でのプログラミング教育必修化」がいよいよスタートしました。
子供も大人も手にはスマートフォンと言うほどIT技術が身近になり、便利なサービスが日進月歩で生まれている昨今、プログラミング教育が必修化されたワケについて確認していきましょう。
- 2020年度から小学校においてもプログラミング教育の必修化
- 論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成が目的
- 必修化は突然実施されたわけではなく3年以上掛けて練られた事案
- 2030年には78.9万人のIT人材不足が予測されており国全体の課題
- 海外でもプログラミング教育は強化されている
小学校でのプログラミング教育必修化とは
プログラミング教育必修化の流れは突然発生したものではありません。
背景をたどってみると、プログラミングはただの流行などではなく、また小学校からは早すぎるものでもなく、これからの時代を生き抜くための必須スキルであることが浮かび上がってきます。
このような理由から、文部科学省は学習指導要領改訂において、プログラミング教育を充実することとし、2020 年度から小学校においてもプログラミング教育を導入する検討がなされました。
もちろん、プログラミング教育は小学校のみではなく、小・中・高等学校を通じて実施されるべきもので、もはや生涯学習の一部と認識されています。
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必修化の背景
文部科学省運営のポータルサイト「未来の学びコンソーシアム」より
今日、家電や自動車をはじめ身近なものにコンピュータが内蔵され、日々の生活の中でコンピュータに触れないという日はないと言っても過言ではありません。
現代を生きる誰にとっても、学校での学習や生涯学習、家庭生活や余暇などあらゆる場面で、情報機器やサービスとその情報を適切に選択・活用していくことが不可欠な社会が到来しています。
文部科学省は、これまで次のような経緯で小学校におけるプログラミング教育必修化の計画を進めてきました。
小学校プログラミング教育導入の経緯
文部科学省は、小学校でプログラミング教育を施すことの重要性やそのプロセスをまとめた「小学校プログラミング教育の手引」を公開しています。
手引きによると次の経緯をたどって検討がなされてきました。
- 小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議「議論の取りまとめ」(平成28年6月16日)
↓
- 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援 学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」 (平成28年12月21日)
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- 小学校学習指導要領 (平成29年3月31日公示)
↓
- 小学校学習指導要領解説 総則編 (平成29年6月21日公表)
3年以上前から検討されてきていた事案が、2020年からいよいよ実稼働されることになるのです。
現状の問題点と課題は何か
文部科学省がプログラミング教育の必修化を推進するに至った、問題点や課題は何だったのでしょうか。
まず、WebエンジニアなどIT人材の不足が日本全体にとって大きな課題として認識されています。
経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2020年に36.9万人、2030年には78.9万人のIT人材が不足すると予測されています。
私達が日々コンピュータやITサービスを使っている一方、その需要に対応するIT人材の数が追いつかないと政府は予測しています。
「ITスキルは、プログラミングが好きな人だけが自由に学べば良い」という時代は、もう過去のものになりつつあります。IT人材の育成はすでに日本という国全体が抱える緊急課題です。
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プログラミング教育の海外事情
米国のNPO「Code.org」のポータルサイト(日本語や各国言語にも翻訳されている)
「IT人材の枯渇」の問題は、日本に限ったことなのでしょうか?海外のIT教育事情にも目を向け、海外で実施または検討されているプログラミング教育をご紹介します。
米国
プログラミング教育の推進を進めるNPO法人「Code.org」が精力的に活動する様子が、米国内でも大きく報道されています。
2013年末に行われた啓蒙キャンペーンでは、オバマ大統領自らプログラミング教育の必要性を訴える動画が公開され、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグがコメントを寄せた動画も話題になりました。
「Code.org」のWebサイトにも名だたる企業からの協力を得たプロジェクトであることが、うたわれています。
Engineers from Google, Microsoft, Facebook, and Twitter helped create these materials. (Google、Microsoft、FacebookおよびTwitter社のエンジニアたちが本サイトの教材作成に協力しています。)
プログラミングのスキルは就職にも直結することから、学生だけでなく大人も必死に学び始めており、コーディングブートキャンプと呼ばれている短期集中のプログラミングスクールが急増しており、新たな市場を形成しています。
シンガポール
シンガポールでは、経済の活性化を目的としてプログラミング教育が推進されています。
実際、シンガポールはIT分野に早くから注目しており、IT関連の企業も多数存在することは有名です。シンガポールの成長は著しいですが、さらに国際競争力を高めるために、プログラミング教育を早期に実現したとされています。
インターネット産業を統括する「 Info-communications Media Development Authority of Singapore (IMDA)」という国家機関でも、公立校にプログラミングの授業を積極的に導入していくと発表しています。
日本と同様、シンガポールでも、将来活躍する人財が備えるべき能力として、IT関連スキルは必須であると捉えられています。
エストニア
人口が130万人という、ヨーロッパの小国、エストニア。
あまり耳にしない国ではありますが、実は国を挙げてIT教育には力を入れており、優れたプログラマーが多くいる国のひとつです。IT人材が豊富な背景には、プログラミング教育に力をいれているという理由があります。
エストニアでは、小学校一年生からプログラミング教育を始めることを発表しており、Microsoftも活動を支援しています。
エストニアはあのSkypeを生んだ国ということでも有名で、法案の草案をオンライン公開して国民に意見を求めたりと、小国ながらITが発達している国でもあります。
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早くからプログラミングを学ぶことのメリット
プログラミング教育の必修化はIT人材を確保するためだけではありません。
「プログラミング教育は子供たちの可能性を広げることにもつながる」という理由もあります。プログラミングの能力を開花することにより、創造力が発揮され、起業する若者や特許まで取得する子供も出てきています。
プログラミングを学ぶことで、子供の可能性を発掘して将来、社会で活躍できるきっかけを作ることも期待されているのです。
現代の子どもたちは、日常のすべての活動においてコンピュータ等を活用することが求められ、もはや避けることはできません。
小学生のうちからコンピュータを理解し、その活用力を身に付けることは、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なことみなされています。
プログラミングは、国語、算数、理科、社会などの科目と同列に、生き抜くための必須知識とする動きがはじまったことになります。
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まとめ: プログラミングの重要性が高まっている
ITやプログラミングの重要性と聞くと、「AIの進化により人間の仕事がなくなる」と不安を抱く方も多いようです。
一方、そのようなAIやデジタル技術を 「生み出す側」職業は、今後ますます増加することは間違いがないということです。
車というものが誕生して初めて、「整備士」「運転手」「交通整理」といった職業が生まれたことと同じと捉えると理解しやすいですね。
小学校のうちからプログラミング教育の機会を与えてあげることは、単に今、IT人材を確保するためではなく、子どもたちの未来を広げてあげることに他なりません。