システム開発において「受託開発」という言葉をよく聞きますが、具体的な仕事内容をイマイチ把握出来ていない方も多いのではないでしょうか。
これからソフトウェア業界内で転職活動をされる方、または異業種からソフトウェア業への転職をお考えの方、すでに内定をもらった会社が実は受託メインの会社だったという方々は、本記事をぜひご参考ください。
- 受託開発とは他社のためにシステムを作ること
- 規模の大きなシステムでは数年~数十年以上も
- 受託開発には多重下請け構造などの課題もある
- クラウドソーシングにより個人も参入しやすくなっている
- 受託開発はやりがいのある仕事
受託開発ソフトウェア業とは
受託開発とは、ユーザーの要望をヒアリングしてシステムを作り上げる開発をいいます。受託開発はよくオーダーメイドスーツに例えられます。お客様の体の特徴や好みによって、お客様だけのために作るのがオーダーメイドスーツなので、受託開発も目指すところは同じです。
ソフトウェア開発って普通そうじゃないの?と思われる方もいるでしょう。ところが受託開発以外にも、自社で使うシステムを開発したり、自社が企画・設計・開発をして、パッケージとして販売することもあります。つまり、他社のためにシステムを作ることを受託開発といい、自社のために作ることを自社開発という、といえば理解できるでしょうか。
具体的にどんな仕事があるの?
ユーザーの要望や業務フロー、業務上の課題などをインプットとするので、仕事の内容はユーザーによってさまざまです。大部分を占めるのが、ユーザー企業に常駐し、現場の課題や要望をヒアリングして仕様を決めて開発する、というケースです。
全く何もないところからシステムを作ることもありますし、すでに稼動しているシステムを機能拡張・改善していくこともあります。規模の大きいシステムになると稼動期間も長くなり、同じシステムに数年〜10年以上常駐しているという方もおられます。
ユーザーとの打ち合わせの時だけ訪問し、仕事を自社で行う場合もありますが、まだまだ少数派です。
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受託開発ソフトウェア業が抱える課題
多重下請けの構造
受託開発は、ユーザーの規模に応じてさまざま案件があります。特に規模が大きくなると、複数の会社がユーザーの会社フロアに常駐し共同開発します。この場合、ソフトウェア業界でよくいわれる受託開発の課題「多重下請け構造」が出てきます。この状況では、複数の会社が全て横ならびの立場で開発することはなく、
- ユーザーと直接かかわる一次請け(直受け、元請け)と呼ばれる立場の会社がある。
- 一次請けが、二次請けに仕事を振る。
- 二次請けがさらに三次請けに仕事を振る。
というのが一般的です。場合によってはさらに多階層になることもあります。
お金の問題
まずはお金です。例えば一次請けが100万円で受注すると、相場として二次請けが80万、三次請けが60万で受注、となります。一次と二次が丸投げ体質の企業であれば、手を動かすのは三次請けのみになってしまいます。すると、ユーザーが100万円支払っても、得られる開発力は60万円分で、40万円が開発以外に消えてしまいます。ユーザーはこんなことが納得できるでしょうか?
ならば三次請けが直接ユーザーから受注すればよい、といえばそうではありません。三次請けは一般的に企業規模が小さく、直接受注できるほど企業体力に余裕がありません。一次請けとユーザーの結びつきが長年に渡り、強固である場合が多くあります。三次請けが割って入るのは非常に難しく、結局は三次請けの立場で仕事をもらうしかありません。三次請けから抜け出すのは至難の業なのです。
体制面や指示系統の問題
三次請けが一次・二次請けに仕様確認や質問をしても、ユーザーに届くまで時間がかかったり、誤った伝わり方をするという伝言ゲーム状態になります。さらに、一次・二次が責任感のない企業であれば、何を聞いても結局「直接ユーザーに聞いてね」となります。しかし何もしない一次・二次に中間マージンを持って行かれるので、三次請けは不満を感じざるを得ません。
最近、クラウドソーシングの広告で「ユーザー直請け(プライム案件ともいう)多数!」「やっぱり直請けはユーザー手戻りが少ないなあ」というフレーズをよく見かけます。これらのフレーズが魅力的に感じるのは、上記のような課題があるからです。
受託開発が主体の企業も、自社でパッケージ商品やサービスの開発といった自社開発にチャレンジすることはあります。しかし、受託開発は安定した収入源であるので、それを捨ててまで自社開発を優先させるかというと別問題になります。自社開発の方が、自分たちの作りたいものが作れてやりがいはあるのでしょうが、なかなか難しいところです。
多重下請けの中で、ユーザーに近い立場にいる企業ほど上流フェーズを占めてしまい、三次請けになると大半がプログラミングやテストといった下流フェーズがメインになることも問題です。上昇志向の高いエンジニアが三次請けメインの企業に入ると、モチベーションの維持が難しかもしれません。
課題は解決するのか?
経済産業省が平成27年3月に発表した「IT産業における下請の現状・課題について」によると、以下の内容が述べられています。
元請企業・下請企業別に給与水準を比較すると、下請企業( 2次請け、3次請け)よりも、元請企 業(1次請け)の方が給与が高く、年代が上がるにしたがって差が広がる傾向にある。契約上立場の弱い下請企業の利幅が圧縮されている可能性がある。
我が国のIT産業の重層的な構造は、事前に仕様を固めるウォーターフォール型開発に適合した構造と考えられるが、プロセス間のやり取りが頻繁に発生するアジャイル型開発等には適合しにくい構造であると考えられる。
非常に端的に述べられています。同じ資料によると、建設業界でも同様な課題があったそうで、以下のような対応となりました。
請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合は、「一括下請負」として原則禁止。発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切る、施工責任があいまいになる、等。(建設業法 第22条)。
IT業界でも有効な解決策ですね。だからといって同様な対応をしたところで、解決できるでしょうか?解決にはまだまだ時間がかかりそうです。
業界動向を知っておこう!
クラウドソーシング
受託開発の動向に変化が起きています。従来では力のある元請けが仕事を受けて分配する、という流れが一般的でした。ところが最近、発注元が仕事を細分化して、インターネットを通じて直接募集をかけるという「クラウドソーシング」が盛んになりつつあります。
コスト削減したい企業や、まだ体力のないスタートアップ企業、個人ですらクラウドソーシングを利用し始めています。応募する側もフリーランス、または本業を別に持っている人が副業として、とさまざまです。OSSの利用拡大や開発ツールの低価格化、安価で機能が豊富なクラウドサービスなども追い風となり、個人の参入できる領域は確実に広がっています。
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まとめ
先に述べたように、受託開発そのものは、ユーザーに寄り添って要望や課題をまとめ、システムという形にしていくといった「やりがいのある仕事」です。現に、受託開発が好きであえてその道を選ぶ人もいるくらいです。
多重請け負いや下請けの哀愁といった暗いイメージはありますが、それは本質的なものではなく、あくまで本質は「ユーザーと寄り添い、いっしょになって形にする」です。単にプログラムを量産するよりも、ユーザーとともに苦労して何かを生み出したい、そういった考えの方は、ぜひとも受託開発を選択することをお勧めします。