AWS(Amazon Web Service)に興味を持って概要を知りたいと思っていても、公式サイトの説明ではサービスがたくさんあって中々概要をつかむのは難しい…そこで本記事では、メリット、デメリットやAWSを始めるまでの方法等を解説します。AWSの導入を考えている方、少しでも興味があって概要を知りたい方に読んでいただけると幸いです。
目次
クラウドコンピューティングとは
クラウドコンピューティングとは、私たちが普段、自宅や職場のコンピュータ上で使っているOSやストレージ、ソフトウェア、ネットワーク等の「資源(リソース)」を、インターネットを通じて利用することです。従来これらの資源は私たちの手元にありましたが、クラウドコンピューティングでの資源はインターネットを介した向こう側にあります。
システム構成図等でインターネットを介している事を雲のマークで表現することがあります。資源がインターネットを介して隠れている様子を「雲の中」に例えて、「クラウド」と名づけられました。
このように、雲(インターネット)の向こう側の資源を使うことがクラウドコンピューティングです。次の章では、主なクラウドコンピューティングの種類について解説します。
クラウドコンピューティングの種類
クラウドコンピューティングでクラウドを提供する会社が提供する資源には、様々な種類があります。主に3種類あり、ほとんどのクラウドサービスはこれらに当てはまります。
Infrastructure as a Service (IaaS)
サービスとしてのインフラストラクチャを指し、仮想サーバー、ストレージネットワーク等のインフラを提供します。同じくサーバーやストレージの提供ではホスティングがありますが、IaasとはメモリやCPUのスペック、ストレージ容量等を管理者側で自由に決めて使うことが出来る点で異なります。
Platform as a Service (PaaS)
サービスとしてのプラットフォームを指し、アプリケーションの開発およびデプロイが出来る環境を提供します。Iaasで提供されるインフラに加えて、ミドルウェアや開発・分析ツール、言語ごとに必要なライブラリ等の提供も含みます。
開発ツールにはDB接続やアプリケーションのビルドを簡単に実行してくれるツールが用意されており、使用したい環境を選択するだけで開発環境構築が完了します。その反面、使用できる言語やDBは私用するPaasのサービスが対応しているものである必要があります。有名なPaasであれば主流の言語はカバーしている場合がほとんどですので、マイナーな言語を扱う場合以外は気にならないでしょう。
Software as a Service (SaaS)
サービスとしてのソフトウェアを指し、パッケージ製品をインターネットを介して使えるサービスを提供します。世の中に出ているSaasのソフトウェアは多岐に渡り、Gmail等のメールソフトやサイボウズ等のグループウェア、dropbox等のストレージといったものがあります。
メリットとしては端末やOSに限らずブラウザがあれば使用できるソフトウェアが多く、利用するユーザ数やストレージ容量等の自由度が高い事が挙げられます。その反面、従来のように端末にソフトウェアをインストールしている場合はオフラインでの利用が可能なものがほとんどですが、アプリケーションの機能自体をオンライン環境でなければ利用できないデメリットがあります。
アマゾンウェブサービス(AWS)とは
AWS(AmazonWebService)とは、Amazonの提供するクラウドサービスの総称です。クラウド市場のうちの5割以上がAmazon、Microsoft、Google、IBMの4社が提供するクラウドによるものです。そのうちAWSは、全市場のうちの3割以上のシェアを占めています。
冒頭で「AWS」はクラウドサービスの「総称」と言ったように、仮想サーバー(EC2)をはじめとし、ストレージ(S3)やデータベース(RDS)等、AWSでは全部で100種類以上のサービスメニューを提供しています。
AWSでできること
先に書いたように、AWSには多くのサービスメニューがあり、業務の内容に応じて必要なメニューを選択することが出来ます。
サイト制作
クラウドのウェブホスティングソリューションにより、商業用のWebサイトも低コストで配信することが可能です。ホスティングで使用したリソースは使った分だけの料金を支払い、不要な分を開放する事で無駄なコストをかけずに済みます。サイトのトラフィックは季節や時間帯、キャンペーンや宣伝の効果等により増減するものですが、メニューによっては負荷状況によってスペックを容易に調整させることが出来ます。
「Amazon Lightsail」というサービスでは、Wordpress等のCMSや、EC-CUBEやMAGENTO等のECプラットフォームによるECプリケーション等、複数人が頻繁にコンテンツの更新を行うサイトを運営できます。サーバー作成のための簡単なインターフェースが用意されており、細かな設定を意識することなくサービスを立ち上げ可能です。多数のサーバーにスケールアップする可能性の無いサイトであれば、低コストで運用出来ます。
クラウド内で自由に規模の調整をする必要がある企業サイト等では、「Amazon Elastic Cloud Computing (Amazon EC2) 」を使用するのが良いでしょう。EC2で借りているサーバーを「EC2インスタンスと呼びます。仮想サーバーを提供するサービスで、OSも好きなものを使用できます。サイト製作でEC2を利用するために組み合わせるといいサービスとして、負荷分散のためのロードバランサ「Elastic Load Balancing」やリソースのモニタリングツール「Amazon CloudWatch」があります。
バックアップ
業務におけるバックアップの対象として、災害からデータを守る場合が挙げられます。同一データセンター内に冗長化の仕組みを構築している場合、同じ場所のサーバー、ネットワークを使用していることから、災害時の復旧は困難です。また、同一の場所ではなく他のサイトにサーバーを用意することは、従来コストも時間もかかるため現実的ではありませんでした。
AWSでは世界中にデータセンターが存在し、サイトを選択して容易にバックアップの環境を準備することが出来ます。「Elastic Load Balancing」では、複数のデータセンターへ冗長構成のサーバーを用意しデータベースの同期を行うことができ、異常時には系統を切り替えることが出来ます。先ほどの章でEC2で製作したサイトの場合は、AMI(Amazon Machine Image)というインスタンスの元になるテンプレートを取っておくことで他の場所のデータセンターでEC2を起動することも出来ます。
ビジネスアプリケーションの利用
AWSには、Webアプリのためのサーバーだけでなく、MicrosoftやSAP等のビジネスアプリケーションの実行環境も容易に構築出来ます。EC2で利用できるOSやDBMS等のミドルウェアの種類は豊富で、現行のアプリケーションをそのままAWSに移行して利用可能です。
例えばWindows上で動いていたビジネスアプリケーションをAWS上で利用するためのサービスに、前述の「EC2」(WindowsOSを選択)や、動作するサーバーのストレージに「Amazon EBS」、アプリケーションが接続するデータベースに「Amazon RDS」等を利用します。
AWSを利用するメリット
AWSを使うとたくさんのメリットがあります。オンプレミスからクラウドへの移行を考える際の参考にしてみてください。
初期コストがかからない
AWSを新規に導入するには費用がかかりません。リソースを利用した分だけ、利用料という形でコストがかかります。料金は通信量やサーバーであれば使用時間、ストレージであれば使用量を元に計算されます。
始めるまでに時間がかからない
AWSにアカウントを作成すると、12か月分の無料利用枠が利用できるようになります。アカウントを作成時、支払い情報を登録する必要があります。もし利用したいサービスが無料枠外の場合でも、この支払い情報を元に全てのサービスを利用することが出来るようになります。全ての契約がWeb上で完結し、特別な対面での契約や郵送での対応は必要ありません。
安心のセキュリティ体制
AWSのセキュリティで意識しておくべき考え方に「責任共有モデル」があります。セキュリティの責任範囲を明確に分ける考え方で、クラウド提供側(Amazon)は物理的なデータセンタやハードウェア、ネットワークの運用・管理に責任を持ち、ユーザー側はOSより上位の層のアプリケーションやデータ、アクセス管理等の運用・管理に責任を持ちます。Amazonの責任範囲であるインフラについては情報が外部に公開されていない代わりに、そのセキュリティのレベルは第三者機関による認証や監査による認証を取得しています。
拡張性が高い
前述したとおり、利用できるサービスは多岐に渡ります。これらのサービスを取捨選択することによって、機能拡張することが出来ます。また、サービスによってはトラフィック量や事業規模の増減によりスペックを自由に調整することができます。
世界的な対応
AWSのインフラは世界各地の「リージョン」と「アベイラビリティゾーン」で運用されています。リージョンは物理的に離れた地域を、アベイラビリティゾーンはリージョン内の複数の物理的に独立した場所を指します。複数のアベイラビリティゾーンを利用する構成にすることで、障害に強く高い可用性を持つ運用環境を構築することが出来ます。
AWSのデメリット
このように、メリットの多いAWSですが、良いことばかりではありません。移行の際は、デメリットも見て実際に運用が出来るかよく検討して導入するようにしましょう。
月々のコストが変動する
初期コストはかからない反面、使用量によって従量で課金されます。そのためトラフィックが上下しやすいシステムの場合等、毎月かかる費用が読みにくいというデメリットがあります。一定額の超過をアラートとして設定できる機能もありますが、企業のシステムではシステムを停止できない場合が多いため、毎月の実績の分析や予測、計画が必須になるでしょう。
メニューやオプションが豊富すぎる
選択できるメニューやオプションが豊富で自由度が高い反面、サービスの選定や設計にはそれなりの知識が必要になります。特に
小さなサービスを運用するのに、可用性やセキュリティ等の非機能要件に対し過剰になると、思わぬ設定ミスが起こる原因ともなり兼ねません。構築前に決定したサービスレベルに沿った構築・運用が出来ているか、要所要所でチェックするようにしましょう。
無料ではどこまで使えるのか
AWSに新規で登録すると、無料枠が与えられます。AWSの無料利用枠には、アカウント登録後1年で有効期限が切れる製品と無期限でずっと無料のサービスがあります。前者は1年間無料ですが、それぞれに「1ヶ月間ごと」の使用量に対する制限があり、超過した場合は従量制で課金されますので注意が必要です。1年の無料枠が提供されるサービスとしては、前述した「EC2」や「S3」、「RDS」等の主要なサービスがあります。
詳細は下記をご参照ください。
https://aws.amazon.com/jp/free/(AWS 無料利用枠)
AWSの始め方
AWSのサービスを利用するには、AWSのアカウントを作成する必要があります。アカウントを作成するには下のような操作が必要です
- AWSの上部右端にある「AWSアカウント作成」ボタンをクリック
- ログイン時に利用するEメールアドレスやパスワード、アカウント名の登録
- 連絡先情報の登録
- お支払い情報の登録(クレジットカード情報登録)
- 自動音声電話によるアカウント認証
- サポートプラン(無料~有償で3種類)の選択
AWSを始めよう!
今回はAWSでできること、メリットやデメリット等、AWSの基本について解説しました。クラウドコンピューティングでは、コンピュータ上で使っている「資源」を、インターネットを通じて利用します。そのクラウドの全市場のうちの3割以上のシェアを占めるのがAWSです。AWSには豊富なサービスメニューがあり、業務の内容に応じて必要なメニューを選択出来ます。
AWSは初期費用がかからず、登録もWeb上で完結します。新規登録直後は無料枠の中であれば無料で使い始めることが出来ます。1年の無料枠内で使えるサービスの場合でも、「1ヶ月間ごと」の使用量を超過すると課金されますので、サービスによる課金の条件をよく確認して利用するようにしてください。