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インターネットの情報網を「雲」に見立てた「クラウド」という言葉も定着してきました。このクラウドを活用した「クラウドコンピューティング」について、基本から使い方までを順に解説します。

クラウドコンピューティングとは

「クラウドコンピューティング」は、クラウド上のサービスプラットフォームから、データの処理機能、データベースストレージ、アプリケーションや他のさまざまなITリソースを使いたいときに使いたいだけ、従量制料金で利用するしくみです。

クラウドコンピューティングを使うメリットのうち、企業や組織で重要な点は次のとおりです。

ソフトウェア購入や更新作業不要

クラウドコンピューティングのサービスは、常にアップデートされるため、ユーザー側での更新作業なく最新のサービスを使えます。

企業においては、これまでは新しいソフトウェアに更新されるたびに、更新版購入の稟議書を発行するといった手順が必要でした。クラウドコンピューティングを用いるとそれらの作業はなくなります。

デバイス不問

クラウドコンピューティングを用いて作られたサービスでは、データはクラウドサーバー上に保存されます。インターネットに接続されている端末であればデバイスを問わないため、パソコン、スマホやタブレットといずれのデバイスからでもアクセスできます。

使った分だけの従量課金制

クラウドコンピューティングを用いたサービスでは、費用は利用量に応じて生じます。「必要なときに必要なだけ」サービスが利用できます。

導入コストがほぼゼロ

クラウドコンピューティング以前は、ソフトウェアを導入するたびにパッケージを購入するという初期投資が発生していました。

「必要なときに必要なだけ」サービスを利用するクラウドコンピューティングのサービスでは、初期費用はほぼゼロで、利用後に利用した分だけ料金を支払います。

クラウドコンピューティングの種類

クラウドコンピューティングにはサービスの範囲によりさまざまな種類があります。「IaaS」「PaaS」「SaaS」といった名前は見聞きしたことがあるかもしれませんね。

代表的なこれらの3つの種類を順に解説します。

Software as a Service (SaaS)

SaaSは、「Software as a Service」の略語で「サース」と読みます。

クラウドコンピューティング以前は、ソフトウェアがパッケージ製品として提供されていましたが、これらをインターネット経由でサービスとして提供します。

SaaSを使うと、データをインターネット上に保存して、複数のユーザーで同じデータを共有したり編集するといったグループワークが簡単に行えるようになります。

Platform as a Service (PaaS)

PaaSは「Platform as a Service」の略語で「パース」と読みます。

アプリケーションソフトが稼動するハードウェアやOSなど、プラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供します。

このPaaSは、エンドユーザにオンライン上でサービスを提供するSaaSをさらに拡張させたもので、大規模なデータセンターなどにプラットフォームを用意して外部に開放し、主に企業や組織が、そのプラットフォームの上で自社サービスを開発します。

データセンターを多数の企業で分け合って共有しているイメージです。自社サービスの開発者は、PaaSのシステム設計に則ってアプリケーションを開発できるので、コストを抑えつつ短期間でシステム開発できます。

Infrastructure as a Service (IaaS)

IaaSは「Infrastructure as a Service」の略語で「イァース」と読みます。

情報システムの構築に必要な仮想サーバーなどの機材やネットワークといったインフラを、インターネット上のサービスとして提供します。

これまでもWebホスティングサービスなどは存在していましたが、サーバーのスペックやOSは、サービス会社に用意された選択肢の中からユーザーが選ぶ程度の自由度しかありませんでした。

IaaSでは、利用するサーバーに必要なハードウェアのスペックやOSを、サービスを利用するユーザーが自ら自由に選定し、さらにそれらをネットワークを介して利用します。

アマゾンウェブサービス(AWS)とは

クラウドコンピューティングといえば「アマゾンウェブサービス(AWS)」というくらい、国内はもちろん海外でも圧倒的なシェアを確保しているサービスです。

使い方は非常に簡単で、組織ではなく個人単位でもはじめられるため、初期設定までを含めて見ていきましょう。

AWSでできること

アマゾンウェブサービス(AWS)では、デプロイツールからデータウェアハウス、ディレクトリからコンテンツ配信に至るまで、50 以上のサービスが展開されています。

企業や組織が必要なプラットフォームとしての要件や機能がほぼ網羅されており、他のプラットフォームへの追加投資は、ほぼ不要というレベルまでサービスが拡張されています。

ウェブホスティング

AWSは、クラウドウェブサイトホスティングの機能を提供しており、このサービスを利用して、企業や組織はウェブサイトやウェブアプリケーションを低コストで配信できます。

マーケティング、リッチメディア、e コマースなど、ウェブサイトの性質に合わせた多数の選択肢が用意されているため、ユーザーは最も自社の要求に近いオプションを選択して、素早くウェブサービスを構築できます。

バックアップ

データの容量や種類が増えたとき、そのデータの保存、保護や復元には、技術と多くの工数がかかっていました。AWS を利用した場合、データのバックアップや復元機能のスケールアップ・スケールダウンもクリック数回で完了します。

AWSのバックアップは耐久性と安全性にも定評があり、自社独自でデータベースやバックアップを構築・管理するよりははるかに安全性が高いと言えます。

オンプレミス型、ハイブリッド型、クラウドネイティブ型などどのような形式のバックアップだとしても、タイプやユーザーのIT環境に合わせたデータ保護ソリューションを設計してデプロイできます。

ビジネスアプリケーションの利用

AWSは、ビジネスアプリケーション向けのソリューションも提供しており、Microsoft、SAPやOracle といった、ユーザーがこれまで使い続けてきたビジネスアプリケーションも実行可能です。

ビジネスアプリケーションの使用に必要なだけ、AWS上のリソースを効率的に使用できます。

AWSを利用するメリット

各企業に浸透しつつある「アマゾンウェブサービス(AWS)」ですが、AWSを使用するメリットに着目します。

初期コストがかからない

AWSは、AWSの大部分にあたる100 種類を超えるサービスで従量制料金を採用しています。

AWSはユーザーが必要とするサービス毎に使用する期間と量だけ料金が発生するため、長期での契約や面倒なライセンス登録が不要です。

AWSの料金体系は、水道や電気代など公共料金の課金方法に似ています。サービスを消費した分だけ料金が発生し、使用を停止したときは追加コストや解約料金はかかりません。

はじめるまでに時間がかからない

企業ではなく個人単位でも気軽にはじめられるところも、AWSのメリットです。AWSアカウントへサインアップするとすぐAWSを無料利用枠で利用できます。

「アカウントを登録し、利用したい機能をクリックで選択していく」というインターネット上のサービスを日常的に利用しているユーザーであれば、AWSの利用開始も全く同じ感覚で完了することができます。

万全のセキュリティ体制

AWSのインフラは、AWSの広大なデータセンターに収容されており、どのようなセキュリティ要件のユーザーのニーズも満たせるよう一括管理されています。

AWS のインフラの設計は、可用性を最大限に高めるという方針に基づき設計されており、ユーザーのプライバシー保護のため、インフラの統合や分離に柔軟に対応できるしくみになっています。

データのセキュリティ保護に関して、厳密なルール化がなされており、AWSクラウドでシステムをデプロイした場合、ユーザーとAWSの間でセキュリティの責任の範囲が明確化されます。

基盤となるインフラはAWSが管理、ユーザーはAWSでデプロイするコンテンツを保護します。

拡張性が高い

AWSは PinterestやGEなどさまざまな組織と密接に協働し、幅広い選択肢のデータベースエンジン、サーバー設定、暗号化および強力なビッグデータツールといった充実した機能を展開してきました。

ユーザーはインフラに縛られることから開放され、ビジネスに直結したシステムやサービスの開発だけに注力できます。現在、500を超える機能が追加され、AWSは日々進化しています。

グローバルなサービス展開

AWSは世界を18の地理的リージョンで管理し、さらにローカルリージョンを55のアベイラビリティーゾーンに分割して運用しています。

バーレーン、香港特別行政区、スウェーデンなどのリージョンやアベイラビリティーゾーンも順次追加され、AWSの対応範囲も拡張を続けています。

AWSのデメリット

AWSのメリットのみではなくデメリットにも触れておきましょう。AWSでは多数のサービスが提供されており、サービスをすべて把握するのが難しくなっている点が最大のデメリットと言えます。

メリットである拡張性の裏返しでもあり、ユーザーによりメリットかデメリットかは分かれるところです。その他のAWSのデメリットを挙げます。

月々のコストが変動

初期コストがほぼゼロで、利用した分だけ変動費として課金される点はメリットである一方、毎月の出金予測が立てにくいという問題が発生します。

トラブル対応サービスに乏しい

AWSはインフラを提供するのみのサービスであるため、問題の発生時はユーザー自身でトラブルシューティングをしなければなりません。

AWSが提供するサービスのメニューが豊富で、何でも実現できてしまうがゆえに、サービスの選定と設計にノウハウも必要になります。

AWSの料金プラン

AWSが提供する、コンピューティング、ストレージ、データベース、分析、アプリケーション、デプロイの幅広いサービスは、サービスごとに固有の料金です。ライセンス要件は不要で、多くのサービスが無料利用枠を設けています。

無料枠でどこまで使えるのか

AWSで無料利用枠を設けているサービスでは、無料利用枠の期間が終了しても自動的にサービス自体が期限切れで使えなくなることはありません。

無料利用期間の終了が近づくとAWSから課金開始の通知が来ます。その時点で、課金してサービスを継続する場合は、そのまま利用を続ければ良いのですが、試験使用など無料枠内だけでサービスを利用する場合は、サービス自体を停止する設定が必要です。

AWSで無料利用枠を設けているサービスのいくつかを紹介します。

Amazon DynamoDB

規模に関わらず、高信頼性の非リレーショナルデータベースを提供する「Amazon DynamoDB」のサービスの無料利用枠では、25 GBのストレージ、25ユニットの読み込み容量と書き込み容量、Amazon DynamoDBによる毎月2億件までのリクエスト処理に十分な容量が提供されます。

Amazon SES

各自のEメールアドレスとドメインにてEメールを送受信する、Eメールプラットフォーム「Amazon SES」の無料枠では、次のような機能が利用できます。

1か月につき62,000件、Amazon EC2インスタンスから直接送信するか、AWS Elastic Beanstalkを介してAmazon SESを呼び出してメッセージを送信できます。また1ヶ月につき1,000 件、メッセージが受け取れます。

AWSをはじめるには

AWSを利用開始するには、次の手順に沿ってアカウントを作成します。

アカウント作成後に各サービスの設定をするときも、作成したアカウントでAWSのコンソールにログインして設定します。

1. アカウントの作成画面を開く。

AWSの「ご利用開始のためのリソースセンター」から「AWSアカウントを作成する」をクリックします。

2. メールアドレスなどのログイン情報を入力する。

メールアドレスやパスワードなど、今後AWSのログインに必要な情報を入力します。

「AWSアカウント名」は任意に付けられますが、分かりやすい名称を入力しておきましょう。

3. 連絡先情報を入力する。

連絡先情報を入力します。言語選択ボックスが「日本語」以外のときは「日本語」に切り替えます。請求先の情報としても登録されるため、正確に入力します。

すべて入力が終わったら「アカウントを作成して続行」をクリックします。

4. 支払い情報を入力する。

クレジットカード番号等を入力します。

5. 本人確認をする。

「すぐに電話を受ける」をクリックすると入力した電話番号に本人確認の電話が掛かってきます。

PC画面に4 桁の PIN (暗証番号)が表示されたら、電話のプッシュボタンで入力します。

6. サポートプランを選ぶ。

特に有償のサポートを必要としない場合は、無料のボタンをクリックして指定すると、AWSへの登録完了です。

「コンソールにサインインする」をクリックするとログイン画面が表示されるので、最初に入力したメールアドレスもしくは電話番号とパスワードでログインします。

まとめ

「クラウドコンピューティング」というと難解なシステムのように思いがちですが、日頃からWeb上のサービスを使用しているユーザーにとっては、登録や操作自体は難しくありません。気軽に使用してみましょう。

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