無償で利用可能なExpress Edition
SQL Serverは、有償版の「Standard Edition」「Enterprise Edition」などの他に、無償で使える「Express Edition」が存在します。
「Express Edition」は、一部の制約がありますが、有償版のSQL Serverと同じコード・ベース(共通のプログラム)で作成されているため、有償版と同じ機能が基本的に利用できます。
Express Editionの機能制限
先述のように、SQL Server Express Editionは、有償版とほぼ同じ機能がつかますが、いくつかの機能制限があります。
ハードウェア制限
まず、ハードウェア制限としては次のようなものがあります。
- CPUの制限は、1ソケットまたは4コアのどちらかが上限。
- メモリの使用制限は1GBまでが上限。
- HDDはデータベース1つあたり10GBまで。(同じインスタンス内であってもデータベースが違えば、それぞれ10GBの領域が使用可能)
たとえ、SQL Server Express Editionをインストールしたサーバーが上記以上のスペックであっても、Express Editionの場合は、制限以上のスペックを使用できません。
SQL Server Express Editionは、扱うデータが少なく、それなりにアクスセス数が少ないシステムでは無料で使えるため重宝しますが、規模が大きなシステムでの使用は難しいでしょう。
SQL Serverのスケジューリングサービスが使えない
無償のExpress Editionでは、「SQL Agent job スケジューリングサービス」などが使用できません。
そのため定期的にデータベースをバックアップしたり、サーバーの異常を検知して自動的にメールを送るようなサービスが使用できず、これを実現しようとすると、自前でデータベースをバックアップするバッチファイル(.bat)などを作成し、Windowsのタスクスケジューラなどの機能を使って定期的にバックアップするといった対応が必要になります。
接続数の制限はあるのか?
ハードウェアの制限があるので、SQL Server Express Editionは「データベースに接続できるクライアント数にも制限があるのでは?」と思われますが、無償版のExpress Editionでも接続数には制限はなく、無制限です。
ただし、SQL ServerをWindows7やWindows10のようなPCにインストールした場合、接続できるクライアント数が20台に制限されます。
接続数を無制限にしたい場合は、Window ServerのようなサーバーOSにSQL Serverをインストールしましょう。
有償版へ移行もできる
初めは、無償のSQL Server Express Editionから初めて、アクセス数が負荷が大きくなったり、HDDの容量が不足した場合は、後から有償版にアップグレードすることができます。
有償版へのアップグレードは、ツールを使ってが簡単に行え、SQL Serverの再インストールも不要です。
では、SQL Server Express Editionを有償版にアップグレードする手順を紹介します。
まず、スタートメニューより「SQL Server ○○○○ インストールセンター」を起動します。(○はSQL Serverのバージョンです)
左側のメニューから「メンテナンス」を選択し、「エディションのアップグレード」を選択します。
有償版のSQL Serverを購入した時の「プロダクトキー」を入れて「次へ」を選択します。
プロダクトキーを入力後は、基本的に画面の内容に沿って、設定を進めます。
このように、有償版へのアップグレードは、どちらかと言うと無償版の制約を解除するような行為になるため、簡単にアップグレードが行え、アップグレードの際にデータが破損したりSQL Serverが動かなくなるといった問題は基本的には発生しません。
SQL Server Enterpriseや、Standardエディションの価格や、ライセンスについては以下の記事で解説していますので、こちらもご覧ください。
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▶SQL Serverのライセンス概要を確認しよう!各エディションの違いとは?
SQL Serverのサポート期限
ここからは、SQL Serverのバージョンごとのサポート期限について確認します。
以下の表は各バージョンのメインストリームサポート期限と、延長サポート期限をまとめた表です。
これを見ても分かる通り、2020年11月現在、SQL Server 2008は既に期限切れ、SQL Server 2012はサポート期限が間近に迫ってきています。
製品バージョン | メインストリームサポート期限 | 延長サポート期限 |
---|---|---|
SQL Server 2008 (R2) | 2014年07月08日 | 2019年07月09日 |
SQL Server 2012 | 2017年07月11日 | 2022年07月12日 |
SQL Server 2014 | 2019年07月09日 | 2024年07月09日 |
SQL Server 2016 | 2021年07月13日 | 2026年07月14日 |
SQL Server 2019 | 2025年01月07日 | 2030年01月08日 |
サポートが切れた製品を使い続けると、セキュリティの脆弱性が発見された時、更新プログラムが提供されないため、セキュリティ・リスクを抱えたまま、データベースを運用する必要があります。
もし、現在 SQL Server 2012以下のバージョンを使用している場合は、早めにアップグレードすることを検討しましょう。
SQL Server 2012のサポートはService Pack4が必要
SQL Server 2012の延長サポートを受けるためには、SQL Server 2012にService Pack4を適用しておく必要があります。
もし、Service Pack4が適用していないSQL Server 2012を使用している場合、できるだけ早くサービスパックを適用するようにしましょう。
SQL Server 2012 Service Pask4は、次のURLからダウンロードできます。
https://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=56040
そろそろ新しいバージョンへの移行を検討
SQL Serverを無償で使えるExpress Editionの紹介や、SQL Serverのサポート期限について解説してきました。
SQL Server 2012は延長サポートの期限が「2022年07月12日」に迫っており、そろそろ移行の検討が必要な時期に近づいてきました。
サポートが切れた途端にSQL Serverが使えなくなる訳ではありませんが、使い続けることでセキュリティ上のリスクが発生することがあるため、サポートが切れる前にSQL Serverのバージョンを上げて移行することを検討しましょう。
SQL Server 2012よりも新しいバージョンの概要などは、次の記事で解説していますので、こちらもご覧ください。
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