SQL Serverには、Express Editionと呼ばれる無償版があります。
本番環境に使う場合に、大きなデメリットはないのでしょうか?
目次
SQL Server Expressは、無償で利用可能
マイクロソフト製データベースエンジン、SQL Serverのうち、無償で使えるエディションです。
通常版SQL Serverと同一コアで開発されていて、基本機能はほぼ使える上、商用利用も可能。
リソース制限があって、自動運用、メンテナンス、可用性に関する機能が使えない点がデメリット。
上位版(有償版)へのアップグレードがシームレスにできるので、小さいシステムから始めたい場合には有効です。大掛かりな移行計画は不要。
2019年7月現在の最新版は、SQL Server 2017 Express Editionです。
Express 2017は商用利用目的の再配布が可能
指定された条件に従っている限り、SQL Server 2017 Express自体を再配布可能です。
ライセンス内容の詳細は、SQL Server 2017 Expressインストール時に、ファイルとしてインストールされます。
ライセンスがインストールされるインストールフォルダは、下記を参照してください。
SQL Server のライセンス条項について – SQL Server | Microsoft Docs
有償版と比べた場合の制限事項
Express Editionは使えるリソースに上限があります。
この制限は、「設定して使用するCPUを1つにすれば大丈夫」というものではありません。物理的にCPUが2つ搭載されているWindows Serverでは使用不可、ということになります。
SQL Server のエディション別の計算容量制限 – SQL Server | Microsoft Docs
また、データベースのサイズは、1データベースあたり10Gバイトまでとなっています。(データベースのサイズとは、データベースのファイル(MDF)のサイズを指します。)
また、機能面でも制限あります。
機能面での制限
- 自動運用
- メンテナンス
- 可用性
小規模システムの運用でも、特に影響が大きいのが自動運用の機能。
「メンテナンスプラン」と呼ばれる自動運用の機能は、ウィザード形式でバックアップスケジュールを設定できます。また、定期的にデータベース自体を圧縮して空き領域を確保したり、インデックスの再構築を定期的におこなってパフォーマンスを維持するのに役立ちます。
他にも、定期的にストアドプロシージャを実行する機能などが制限されています。
最新版はSQL Server 2017 Express Edition
2019年7月現在、SQL Server 2017 Express Editionが最新バージョンです。
ハードウェア要件
メモリ最小 512MB (1GB以上推奨)
CPU最小 x64プロセッサ 1.4GHz (2.0GHz以上推奨)
※x64プロセッサでのみインストール可能。(AMD Opteron、AMD Athlon 64、Intel Xeon (Intel EM64T 対応)、Intel Pentium IV (EM64T 対応))
64ビットシステムでのみ動作します。(一部のクライアントツールは32ビット環境で動作するものもあり)
6G以上のハードディスク空き容量、オフライン環境などでディスクからインストールする場合はDVDドライブが必要。
ソフトウェア要件
対応OSは、Windows 8以降~Windows Server 2019(2019年7月時点)
64ビットOSでのみ動作可能です。
つまり、Express 2017はWindows7では使えません。
一つ前のバージョンの、SQL Server Express 2016がWindows7に対応しています。
ただし、Windows7の延長サポートが2020年1月14日に終了するため、現時点からWindows7上でSQL Server Express 2016を使うメリットはあまりないでしょう。
以下のページから、最新版のSQL Server Express 2016をダウンロード可能です。
Download Microsoft® SQL Server® 2016 Service Pack 2 Express from Official Microsoft Download Center
SQL Server 2017 Expressのサポート終了時期
SQL Server 2017の全てのエディションは、2027年10月12日に延長サポートが終了します。
延長サポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなるため、本番環境での運用ができなくなると考えてよいでしょう。
SQL Server 2008は、2019年7月で延長サポートが終了しました。
SQL Server 2012は、2022年7月、SQL Server 2014は、2024年7月にサポート終了予定です。
なお、サポート期間中でも、セキュリティは不具合修正用のサービスパックの最新版を適用していなければ「サポート対象外」となるので、注意が必要です。
ExperssとSQL Server Evaluation Editionの違い
SQL Server Evaluation Editionは、評価用途で無償で使えるエディション。
180日間、フル機能が無償で使えます。
実際にEvaluation Editionを使ってみて、有償版のEnterprise、Standard、Webのどれを選ぶか見極めるのに最適と言えます。
Express Editionは、期間無制限の機能制限版。小規模の運用環境サーバとして利用できます。
SQL Server 2017 の各エディションとサポートされている機能 – SQL Server | Microsoft Docs
開発目的ならExpressよりSQL Server Developer
Expressが制限のある無償版なら、開発用サーバーに入れて使えばいいのでは?
実は、SQL Server Developer Editionという開発専用のエディションがあります。
こちらは、開発用途なら全機能が無料で使えるようになっています。
SQL Server Developer Editionは、開発目的なら全機能が無料で使える
また、linux上で動作するdockerイメージも用意されています。VMイメージも用意されており、マイクロソフトのクラウド環境Azureでも簡単に使えるようになっています。
Announcing new Azure VM images: SQL Server 2017 on Linux and Windows | Blog | Microsoft Azure
開発目的なら、ExpressよりSQL Server Developerの方が良いでしょう。
Microsoft SQL Server – Docker Hub
SQL Server 2019のExpress Edition
現時点では、SQL Server 2019 Express Editionに関する発表はありません。
早期導入プログラム(Early Adoption Program)に参加することで、SQL Server 2019の評価版(Evaluation Edition)が使えます。
SQL Server 2019の評価版は、以下のページから入手可能です。
ハードウェア面での制限