プロセス間通信とは、Java や Java 以外で作成されたプログラム間で、メッセージのやりとりを行う通信手段のことです。
この記事では、Java でプロセス間通信を行う方法を解説します。
Javaでプロセス間通信を行う方法
Java でプロセス間通信を行う方法には、いくつかの方法があります。
- ソケットを使用を使用する
- 入出力ストリームを使用する
- 名前付きパイプを使用する
1つ目のソケット通信は、IPアドレスとポート番号の組み合わせで、相手と通信をする方法です。ソケット通信は、TCP(Transmission Control Protocol)または、UDP(User Diagram Protocol)のいずれかを利用して通信をするため、プロセス間通信の目的以外にも、ネットワークを通じて外部の端末と通信することも可能です。
Java でソケット通信を実装する方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
【関連記事】
▶Javaソケット通信入門。TCPでデータの送受信をする
2つ目の入出力ストリームを使用する方法は、親プログラムが、子プロセスの入出力ストリームへのハンドルを取得し、子プロセスのストリームに対して書き込みや読み取りを行います。分かりやすく言えば、子プロセスで System.out.println(“メッセージ”); のようしてコンソールに出力したメッセージを、親プロセスが読み取って処理を行うイメージです。
3つ目の名前付きパイプとは、識別名を付けたパイプを作成する機能で、FIFO(先入れ先出し)方式で他のプログラムへデータを渡すことができる特殊なファイルです。1つの名前付きパイプに対して複数のプログラムがアクセスでき、双方向にデータのやりとりができる仕組みとなっています。
入出力ストリームを使用したプロセス間通信
入出力ストリームを使ってプロセス間通信をする方法を見てみましょう。
次のサンプルコードは、子プロセスとして動作するプログラムが標準出力ストリームに書き込んだ内容を、親プロセスとして動作するプログラムが読み取り、結果をコンソールに出力するプログラムです。
まずは、子プロセスのコードを作成します。
以下のコードは、1秒おきに計10秒、標準出力ストリームにデータを書き込むプログラムです。
public class Child {
public static void main(String[] args) {
for(int i = 1; i <= 10; i++) {
try {
Thread.sleep(1000);
System.out.println(i + "秒経過しました。");
} catch (InterruptedException e) {}
}
}
}
次に、親プロセスのコードを作成します。
プロセス間通信を試すため、上で作成した子プロセスのコードを、親プロセスから Java コマンド使って、別プロセスとして起動します。
また、子プロセスの標準出力ストリームのハンドルを getInputStream() で受け取り、子プロセスがストリームに書き込みした内容を、親プロセスのコンソールに出力します。
public class Parent {
public static void main(String[] args) {
Process childProcess = null;
try {
// 子プロセスを起動
childProcess = Runtime.getRuntime().exec("java Child.java");
// 子プロセスの標準出力ストリームのハンドルを取得
var inStream = new BufferedReader(
new InputStreamReader(childProcess.getInputStream()));
// 子プロセスが標準出力へ書き込みを行ったら、コンソールに内容を出力
while (true) {
String line = inStream.readLine();
if (line == null) {
break;
}
System.out.println(line);
}
} catch (IOException e) {
e.printStackTrace();
return;
}
}
}
コードの実行結果は、次のとおりです。
子プロセス側で出力された内容が、親プロセスで読み取られていることが分かります。
$ java Parent.java
1秒経過しました。
2秒経過しました。
3秒経過しました。
4秒経過しました。
5秒経過しました。
6秒経過しました。
7秒経過しました。
8秒経過しました。
9秒経過しました。
10秒経過しました。
名前付きパイプを使用したプロセス間通信
名前付きパイプは、簡単に言えば、FIFO(先入れ先出し)でファイルの読み書きが出来るファイルです。1つの名前付きパイプに対し、複数のプログラムがアクセスし、片方でファイルに書き込みを行うと、もう一方で読み込むことができます。
では、名前付きパイプを作成して、Java プログラムから読み込むサンプルコードを作っていきましょう。
名前付きパイプの準備
名前付きパイプは、Linux や macOS の場合 mkfifo コマンドで作成します。Windows の場合は、専用の API を用いて作成します。
$ mkfifo named_pipe
名前付きパイプが作成されたか、確認してみましょう。
$ ls -lt
prw-r--r-- 1 sato staff 0 1 13 08:42 named_pipe
Java 側のプログラムで読み込むメッセージを、名前付きパイプに書き込みます。以下のコマンドを入力すると、別のプロセ
スが書き込んだ内容を読み込むまでコンソールがブロックされます。
$ echo "Test Message" > named_pipe
読み込み側の Javaコード作成
名前付きパイプからデータを読み込む Java 側のコードを書いていきます。
基本的には、通常のファイル読み込みと同様のコードで、名前付きパイプから FIFO (先出し先入)方式でデータを読み込むことができます。
// 名前付きパイプを読み取りで開く
File file = new File("/path/to/named_pipe");
BufferedReader br = new BufferedReader(new InputStreamReader(new FileInputStream(file)));
// 書き込まれたメッセージを読み込む
String line = null;
while((line = br.readLine()) != null){
System.out.println(line);
}
実行結果
Test Message
最後に
Java でプロセス間通信をする方法について、入出力ストリームを使用する方法と、名前付きパイプを使用する2つの方法を解説してきました。
複数のシステムや、IoT デバイスなどの機器と連携を行う時に、プロセス間通信はよく用いられるため、是非覚えておきましょう。
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そもそもプロセスとは、プログラムの実行単位を指し、例えばメモ帳や、ブラウザなどのアプリケーションを起動すると、メモリ領域などの割り当てを受けたプロセスが作成され、起動したアプリケーションはそのプロセス上で実行されます。